ー Forest Stock in Building ー 建築に森林(CO2)を溜め込む

 自然環境への負荷を減らし森林を再生させたい、との想いからFSU工法は開発されました。
 FSU工法とは柱と同寸の角材をボルトで連結した壁パネルで耐力を構成する木造軸組工法の一種です。壁パネルが構造躯体であり、断熱・気密・水密材であり、防火材であり、内外の仕上げ材にもなります。また、壁パネルを再利用できるよう設計されているのもFSU工法の特徴です。


蓄熱性能と調湿性能

 FSU工法の蓄熱性能と調湿性能を確かめるため、在来工法(断熱材・下見板)、FSU工法(断熱材・下見板)、FSU工法(内外表し)の3棟の実験小屋を作り(写真左)、実証実験を行いました。800Wのヒーターで18時から24時まで毎日温め、水盤も毎日一定量になるよう取り替えました(写真右)。下記のグラフのとおりFSU工法は在来工法より温度と湿度の変化が少なく、内外表しの場合でも発砲系断熱材30mm厚と同等の断熱性能を有しています。
 FSU工法は壁内が木材で満たされているため、在来工法より熱容量が大きく、温度変化が緩やかで調湿性能も高いことが実験の結果からわかります。
 冬は結露しにくく過乾燥にもなりにくい、夏は多湿になりにくいことが実証できました。

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5)-温湿度実験測定結果グラフ

防火性能

 FSU工法の壁パネルは、日本住宅木材技術センターで耐火実験を行い、30分防火、60分準耐火の性能を確認し、国土交通省の防火構造外壁の認定を得ています。
 在来工法の場合、準防火地域で使用可能な外壁仕上げ材は、内部に石膏ボードを貼ることが条件となり、内部に木の表しができません。FSU工法の場合は躯体そのもので防火構造の認定を得ているので、内外部ともそのままパネルの木部を表すことも様々な仕上げを施すことも可能です。

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耐火試験

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耐火試験


ー 仮設住宅から復興住宅へ ー FSU工法が開発されるまで

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集成材工法時代

 FSU工法開発以前から環境負荷削減を実現するために、集成材を使用したFM工法、DEWS工法等を開発してきました。
 しかしながら、複雑な加工で製作可能な工場が限られ、集成材の価格の高騰もあり多数採用されるまでに至っていませんでした。
 そこで接着剤無しにより簡易に製作できる集成材の製作ができないかを検討していた時に、3.11の東日本大震災が起き、FSU工法の前身とも言える、この角材連結パネルの工法が岩手県の応急仮設住宅に採択され、宮古市と山田町で59戸が建設されました。その後、この工法がエコであるとの評価をいただき、盛岡市が山田町、大槌町、陸前高田市の仮設団地に寄贈した集会場の工法として採用されました。さらに岩手県森林組合連合会と釜石地方森林組合から森林組合向きの工法であるとの評価をいただき、釜石地方森林組合の仮設事務所がこの工法で建てられ、二階をモデル住宅として組合員の住宅再建の参考にしていただいております。

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応急仮設住宅

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集会場

釜石森林組合事務所
釜石地方森林組合 仮設事務所


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那須の家

 その間、構造形式や接合方法等の改良を繰り返し、構造耐力試験や耐火試験を経て現在に至っております。
 2014年9月現在、被災者の移転先の高台の造成工事がまだ始まらない段階で、用地確保ができた方の住宅が、この工法で4棟完工し、9月にもう一棟着工します。
 関東地方でも那須町でこの工法での住宅が完成しております。関東地方でも部材製作、供給が本格的に始まっています。
 11月にはこの工法の特徴である解体材再使用の最初の事例として、釜石地方森林組合の本設事務所が、仮設事務所の再使用パネルと新規パネルの併用で建築される予定です。